産・官・学連携事業「バッハに捧げる二夜」
〜地方だからこそできるパートナーシップ〜
町村合併を控え、地方分権、地域間競争、自己責任の潮流の中で、行政も住民もより一層の自立を求められています。
町村合併の大きな目的のひとつに地域活力の伸長があるわけですが、 これからは、人材や地域の特徴・価値を活かした協働して企画する作業がますます重要な意味をもってくると考えています。
当時の公立ホールは、当然ながらほとんど行政が直接運営していました。
住民は、公共事業の受け手の立場にありましたが、これからは、住民が文化事業の企画に積極的に参加する姿勢も求められています。
企画への参画や運営。舞台、音響、照明技術のボランティア支援、そして、メセナのようなスポンサーシップなど住民の参画が期待されています。
ハイアートはプロパー職員がマネージメントし、コミュニティアートは住民がマネージメント、事業によっては協働してマネージメントすることが理想的です。
企画や運営の内容に応じた役割分担からパートナーシップを創出させるなど、公立ホールとして交渉や仲介するマネジメント能力が必要だと考えます。
文化芸術事業は教育、企業、大学、福祉分野などと様々な連携と地域資源(自然環境・観光資源・芸術文化)との連携プログラムが考えられます。
ある日、三友組の社長さんから、電話が入ります。「第四銀行の四交会(銀行の取引企業団体)が40周年を迎えるのだが、会館と連携して地域還元する記念事業ができないかな…事業予算は100万円を用意します。」
私の脳裏に産・官・学プログラムが浮かぶ…「ありがとうございます。私にアイデアがあるので、少し時間をください」「期待して待っています。」
会館の大学アートマネジメント研修でお世話になっている新潟大学の横坂教授に電話を入れます。「これこれしかじかで、四交会と連携して事業できませんか?」
実は新潟大学は2000年にヴァイオリニストのテディ・パパブラミの演奏会を鑑賞して注目しており、いつか大学で招聘したいと考えていたところでした。
棚からぼた餅転んでこい…横坂教授が即答で「やりましょう!」とテディ・パパブラミの演奏会を提案いただきます。早速、四交会に連絡を入れて承諾を得ます。
すべてのタイミングが噛み合い、産・官・学連携事業がスタートします。小出郷文化会館としてもワクワクする初めての取り組みになりました。
この事業は公立ホールと地元企業と会館に研修に来ている大学生とで創る「21世紀バ ッハに捧げる二夜」のコンサートとそのアウトリーチプログラムです。
この役割分担は、事業費支援(メセナ)とチケットセールスは四交会が受け持ち、事業の企画運営と当日のスタッフは、新潟大学の学生が担当します。
音楽事務所との交渉や制作ノウハウの提供は、小出郷文化会館が担うといった、三者のパートナーシップが実現しました。
三者の特性を活かした役割分担により、新しい成果を生み出すことになります。
コンサートの聴衆の数は、今までの平均の3倍となって、大きな事業利益を生み、文化振興基金として小出郷サポーターズクラブ(会館事業費支援メセナ団体)に寄付まで出来たのです。
会館単独では、事業費、マンパワー、宣伝、地域の理解を得るなど様々な点で大変な事ですが、このように連携し、役割を分担することにより、これらがスムーズに運び、多くの成果を生み出しました。
この取り組みは、2002年11月2日(土)NHKBS1のインターネットディベート『アートなくして景気回復なし!?』で紹介されます。
アウトリーチの概念を教わった第一人者の吉本光宏さん、文化庁事業でお世話になった寺脇研部長さん、のちに三陸国際芸術祭で共にアドバイザーとなった加藤種男さんが出演しています。
この番組では稼働率の高さを皮切りに当時の事業「バッハに捧げるニ夜」のテディ・パパブラミコンサートとそのアウト・リーチをメインに吉本さんから紹介いただきます。
平成14年10月18日(金)
パパブラミ学校訪問コンサート
午前:井口小学校 生徒43人
午後:堀之内小学校 生徒70人
平成14年10月19日(土)
パパブラミ・ヴァイオリン・リサイタル
小出郷文化会館大ホール 来場者573人
バッハ:パルティータ第2番
イザイ:ソナタ第3番「バラード」他
テディ・パパブラミ:アルバニア生まれ。82年からパリ国立高等音楽院でヴァイオリンを学ぶ。85年ロドルフォ・リピツァ国際コンクール優勝、93年サラサーテ国際コンクールで第1位及び特別賞受賞。
平成14年11月25日(木)
ピオヴァーノ学校訪問コンサート
午前:須原小学校 生徒64人
午後:小出小学校 生徒98人
平成11年11月26日(金)
ピオヴァーノ・チェロ・リサイタル
小出郷文化会館大ホール 来場者534人
バッハ:ソナタ第一番
アンドリューセン:ラ・ボーチェ 他
ルイジ・ピオヴァーノ:イタリア、フランスの国際コンクールで入賞を重ね、現在サンタ・チェチーリア国立管弦楽団首席チェロ奏者。
また、会館オープンからの継続してきた「小出寄席」にも取材があります。
この寄席のコンセプトはテレビや東京の寄席ではなかなか聴く機会のない「長講」をテーマに古典落語(放送禁止語もあり)を堪能してもらっています。
加えて、送迎バスを用意したり、ホールの稼働席を平土間にして、ゴザに座布団を設え、乾き物にお酒を販売するといった、本来の寄席会場を演出していました。
平成14年10月19日(土)
小出寄席 桂文治、桂平治 他前座
小出郷文化会館小ホール 来場者215人
「動物園」桂前助
「試し酒」桂平治
「長短」桂文治
ーお仲入りー
「しり餅」桂平治
「義眼」桂文治
桂文治
十代目 桂 文治は、東京都豊島区出身の落語家、南画家。落語芸術協会会長。落語江戸桂派宗家。血液型はO型、本名∶関口 達雄。父は同じく落語家初代柳家蝠丸。出囃子は『武蔵名物』。
桂平治
2代目桂平治 - 後の11代目桂文治。
さらに、当時小出郷文化会館では住民に「企画公募あなたの夢ください」事業から「歌声サロン」を選考しています。
月に2回、会館のかまくらサロンに愛好者が集い、歌声が館内に響き渡りまさす。伴奏は、地元のミュージシャンがギターを演奏し、リクエストに応えて様々なジャンルの歌を楽しく歌います。
平成14年10月19日(日)
3周年記念、新宿ともしび「うたごえ喫茶」
小出郷文化会館小ホール 来場者121人
新宿ともしび:吉田正勝・行貝ひろみ・岡田ももこ
実行委員:星和子・湯本キノエ
ギター:佐藤政博・山本正義
3周年記念事業として、うた声サロン実行委員会が開催したイベントも紹介されます。
新宿のともしび「うたごえ喫茶」を招聘して、圏域外から大勢が愛好者が集まり、盛り上がっていました。この3日間の事業がNHKBSで全国に紹介されました。
平成14年度はオープンから7年が経過し、35事業79事業200本を超えるセミナーと充実した事業を展開をしています。
会館の稼働率は大ホールが100.3%、小ホールは71.8%(全国公立文化施設集計法)と大ホールは過去最高を記録しています。
小出郷文化会館の産・官・学から生まれた「バッハに捧げるニ夜」は、後の「響きの森コンサートシリーズ」に発展していくのでした…
つづく
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