魚沼市小出郷文化会館が25周年

今年、魚沼市小出郷文化会館が25周年を迎えました。丁度四半世紀前の平成8年6月9日、小出郷文化会館がオープン記念式典と柿落としが走馬灯のように蘇ります。


(一社)小出青年会議所時代に文化推進事業の一環として発足した広域文化団体「魚沼太鼓」と「魚沼第九合唱団」の柿落とし公演が決まり、住民主役の企画運営が始まります。
会館オープン記念式典は日が射しがこぼれる響きの森公園です。鳴倉山から飛びったハングライダーは紅白の煙でお祝いしながら雪のコロシアム中央に着陸、なかなかのサプライズで会場は湧き上がります。
小出郷消防本部吹奏楽団のファンファーレが鳴り響く中、空には彩雲の虹が架かり、お祝いのくす玉が割られ、奇跡的な粋な演出になります。
こけら落としは会場を大ホールに移します。小出郷広域圏に初めての本格的な劇場オープンのお祝いに駆けつけてくださったお客様で1136席が満席になります。

こけら落とし1部は組曲「魚沼太鼓」。
銀山太鼓(序章)鬼面獅子山太鼓(第一楽章.春)小出囃子同好会(第二楽章.夏)福山太鼓(第三楽章.秋)権現堂太鼓(第四楽章.冬)魚沼太鼓(最終楽章.魚沼の四季)です。
美しい魚沼の自然と四季を見事に奏で、客席からは鳴り止まない拍手の渦に包まれます。構想一年、小出郷圏域の太鼓とお囃子のオーケストラが雄叫びを上げました。

舞台転換は僅か30分、運営主管の(一社)小出青年会議所スタッフの起動力で転換を時間内に収めるといった見事な舞台タイムマネジメントでした。

こけら落とし2部はベートーベン交響曲第九ニ短調「合唱付・魚沼第九合唱団」の晴れの舞台です。
出演は、指揮者:大町陽一郎・演奏楽団:新交響楽団(96人)・ソリスト:高波礼子(ソプラノ.小出町)、新野一枝(アルト.堀之内町)、渡辺直人(テノール)、佐藤康弘(バス)・合唱指揮:吉田顕・合唱:魚沼第九合唱団(364人)です。

歓喜の歌声は感動の涙と拍手の渦でいつまでも鳴り止みません…小出郷文化会館は魚沼太鼓と第九合唱団の住民主役の演奏会で産声を挙げたのでした。
演奏会後の小ホールでの懇親会では大町陽一郎教授から「私がやってきた第九の中でとても印象深い第九になった…

小出郷にこんなに良い会館が出来たということ、その中で貴方達が主役になって第九をやれたことです。」と住民主役の運営を讃えていただきました。

小出郷文化会館建設準備から柿落としまでのドキュメント「春泥の中から」はBSN新潟放送局が4年間取材、制作してTBS放送で全国に紹介してくださいました。
翌日から落とし事業(7企画)や小出町町政施行100周年記念事業(23企画)と会館のコンセプトを活かした文化庁の文化のまちづくり事業(18企画41本・年2,000万円.5年継続1億円)に加え、共催、貸し館事業と怒涛の9ヶ月がスタートしたのでした。

現実は一年間全く休めず、出勤時間は5,117時間…不朽不眠の生活で、若さゆえに無茶振りの、わくわくドキドキの文化のまちづくりがスタートしたのでした。
〈付録〉ベートーベン第九秘話

平成7年9月1日、世界的指揮者大町陽一郎教授が滞在する金沢日航ホテルへ指揮者のお願いに伺います。指揮を引き受ける条件は3つ、1「50回の練習」、2「暗譜」、3「第一楽章から舞台に立つこと」です。

しかし、合唱運営担当の(一社)小出青年会議所は三つ目の第一楽章から合唱団が舞台に立つことは心配で、合唱団にはギリギリまで皆さんに伝えることが出来ませんでした…

9月15日、3つの条件に従うことを決めて、東京芸大祭りにて正式に内諾をいただきます。芸大の音楽棟はきれいに片付いていましたが美術棟は真逆でビックリポンでした。
11月29日、湯之谷地域振興センターで合同練習指導会を開催した際に、大町教授から12月10日はに北海道清水町で第九をやりますから来てくださいとご依頼があり(一社)小出青年会議所メンバー数人で伺います。
 
大町教授の指揮の元、力強く美しくアンサンブルされた歓喜の合唱に圧倒されます。50回の練習と暗譜の意味が伝わってきて感無量でした。

平成8年5月18日、25日、6月1日と東京北区にある労音十条会館で打ち合わせとオケ合わせに立ち合います。
大町教授は新交響楽団の皆さんに「この度の演奏会は合唱団が主役だからね…魚沼のホールは響きますから音を伸ばさず合唱団の声がお客様に良く届くように演奏してください!」と柿落としの意義を伝えていました。流石、一流の指揮者のです。

こけら落としが近づく中、第一楽章から舞台に立つ件について大町教授と面識がある文化庁の外郭団体、芸術情報プラザアドバイザーの宮澤敏夫(コントラバス奏者で現在静岡交響楽団の専務理事)さんから仲立ちをいただきます。

5月18日、労音十条会館にて(一社)小出青年会議所が検討した案を大町先生に提案します。長方形の発泡スチロールに座って最初から舞台に上がるという折衷案は快く承諾いただて、長きに渡り悩んできた案件が解消し、胸を撫で下ろします。  
5月25日、一難去ってまた一難。大町教授から連絡がありオケ合わせにソリストが来ていない?大ホールで魚沼太鼓の通し稽古中でしたが急遽、十条労音会館へ。

広域担当職員との報連相ミスか?ソリストにアクシデントがあったのか?あるソリストは大町教授に反発的で公演当日リハーサルまで手こずってしまいます。丁重に大町教授と新交響楽団に土下座してお詫びを申し上げて参りました。

ひとつ一つ課題、問題を解決するといった日々が続きます。 

こけら落としの舞台雛壇の不安がつのります…こけら落としが雛壇こけら崩れにならないように…雛壇強度プランを再検討します。
最後尾の10段目を建築足場ビデ組に変更し、スジカイを増やします。更に高所安全を図るため両脇は手摺壁を施し、第四楽章で立った瞬間に長方形の発泡スチロールを抜き取れるように手摺壁横に穴を開けています。

また、大町先生が立つ指揮台にも手摺も付けてます。大工(第九)の館長としで安全、安心の舞台設営が求められました。今のオリンピックも安全安心が問われていますね。

文化庁や外郭団体の情報芸術プラザではこけら落としに大工の館長がベートーベンの第九(大工)コンサートをすると…と話題になり駄洒落でよく揶揄われました。

ステージは華やかですが舞台裏は、はらはらドキドキとスリルあるこけら落としになり、忘れられない記憶に残る秘話になりました。

コーポA&O (桜井俊幸.A&O企画)

【桜井俊幸】 魚沼市生まれ。魚沼市小出郷文化会館を18年は5ヵ月務め名誉館長。後に(公社)全国公立文化施設協会(参与)と文化芸術による復興推進コンソーシアム(東京事務所長)。全国国民文化祭総合コーデネイターなどを歴任。 【コーポA&O】 魚沼市内に5棟や駐車場を経営している。 【あんさ&おっさ】 昭和56年、桜井俊幸、治兄弟で結成したオリジナルフォークデュオです。今年8月44年目を迎える。

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