演歌の殿堂「新宿コマ劇場」提携公演
平成8年9月12日、小出郷広域事務組合の議会一般質問での一幕です。議会議員さんから質問をお受けします。
「小出郷文化会館は稼働率が高く全国から注目を浴びる企画運営は評価しますが、あれほど素晴らしい大ホールを持ちながら演歌歌手の公演をなぜしないのか?」
議長さんからご指名を受けて答えます。「会館のミッションとコンセプトを軸に小出郷ゆうきプラン事業を策定して、文化庁の文化のまちづくり事業を展開してます…
事業は会館独自の企画事業ばかりで、買取公演は行っておりませんが、住民からの要望であれば、新たにお楽しみ企画を立ち上げたいと思います。」
*買取公演とは専門家によってつくられた公演が全国ツアーを行う際に、そのうちの一公演を購入して自主文化事業として実施するもをいいます。
広域事務組合からの事業費(税金)とサポーターズクラブからの支援金は文化庁の5年継続事業に充当しており、演歌公演をする財源はありませんので税金は使わずに行いたいと思います。…
…演歌事業は収益を上げて、子どもたちの感性を磨く鑑賞事業や育成事業に活かしたいと思います。」と大きな啖呵を切ってしまいます。
館長になる前に(一社)小出青年会議所の奥只見カーニバルで1,000万以上の収益をあげていたこともあり、なんとかなると考えました。
奥只見カーニバルや八海山麓カーニバル、コスモ音楽祭の企画運営は全てボランティアで開催してきました。
館長になって給与を貰いながら企画運営することは以前と比べると天地の違いで恵まれています。せっかくやるなら全国の公立文化施設がやっていない買取企画にしたいと…
単なるプロモーターからの買取公演(カタログ販売)ではインパクトがないなと妙案を考えているうちに、以前お会いした絶好の人物が頭をよぎります。
今は亡き(社)全国公立文化施設協会の外郭団体の芸術情報プラザの町田裕ベッドアドバイザーから最適な方を紹介いただいていました。
それは、会館オープン前に町田さんが芸術情報プラザのアドバイザーを数人連れて、小出郷文化会館建設に携わったキーマンにヒヤリング調査を実施した時のことです。
平成8年1月11.12日、2月24.25日、3月11.12日に芸術情報プラザのアドバイザーが3回に分かれて小出郷を訪れていました。
そのメンバーの中に、舞台技術アドバイザーの柏原靖典さんがおり、柏原さんは芸能界に太いパイプを持っていて、新宿コマ劇場の渡部部長さんとお付き合いがあることを思い出します。
そこで閃いたのが、演歌の殿堂「新宿コマ劇場」との提携公演です。早速、柏原さんからコマ劇場の渡部部長を紹介してもらいます。
私は小出郷文化会館のこれまでの経緯を渡部さんに説明します。「渡部さん、新宿コマ劇場と演歌提携公演を結びたいのです…
初演をぜひ、新潟県出身で、下積み時代に小出町のバーに訪れていた小林幸子さんの公演をお願いしたいんです」と熱く語ります。
「桜井さん、公立ホールとコマ劇場との提携公演ですか…なかなかレアな企画案ですね、社長に相談しますね。」「ありがとうございます。」一歩前進します。
渡部清さんは、24歳で新宿コマ劇場に入社し、美空ひばりさんの専属音響技師として16年間担当し、後に事業部長として、コマ劇場の全盛期を支えています。
左が新宿コマ劇場事業部長の渡部清さんです。
新宿コマ劇場は、東京都新宿区歌舞伎町一丁目にあり、1956年12月28日から2008年12月31日まで株式会社コマ・スタジアムが運営していた劇場です。
「演歌の殿堂」として広く認知され、喜劇や数々のミュージカル作品も上演されます。コマ劇や新コマとも言われていました。
渡部さんは閉館にあたり「新宿コマ」座長たちの舞台裏/渡部清 薯を執筆され、小出郷文化会館との連携公演もご紹介いただきました。
主な内容は美空ひばりさん、島倉千代子さん、北島三郎さん、越路吹雪さん、藤田まことさん、都はるみさん、山口百恵さんらの知られざるエピソードが綴られ大変おもしろいです。
新宿コマ劇場の座長として多くの観客を集める歌手や芸人と仕事を共にした音響技師(渡部清さん)が初めて語りおろしています。
ラジオ放送「さよなら新宿コマ劇場」に渡部清さんがゲスト出演して、美空ひばりさんの秘話を語っています。⬇️
話を元に戻します。
去る12月17日、小出郷広域事務組合の議会に出席したその夜の議員さんとの懇親会で宴が盛り上がっていると、新宿コマ劇場から連絡が入り、提携公演が叶いそうなお話しで胸は高鳴ります。
公務が忙しく東京出張が難しいことから、小林幸子25周記念特別公演は一年間かけて、電話やファックスで進めます。全国ツアーになるらしく調整を要します。
平成9年12月19日、新宿コマ劇場に伺い、一番心配している公演日程と予算について、渡部さんと詰めます。契約金は1,000万を遥かに越えます。
会館のチケット金額を設定して、赤字にならないよう検討します。金額はコマ劇場から承認をもらい告知宣材をお願いします。
平成10年3月3日、この日の新宿コマ劇場は北島三郎特別公演オンステージが開催されています。客席は満席(2,088席)、渡部部長と公演を視察しています。
視察後、新宿コマ劇場の福田社長さんと直接お会いして、お礼と提携契約条件について打ち合わせし、夢が現実に近づきます。
第一回お楽しみ企画は平成10年11月28日(土)、小林幸子25周年特別公演(2回)が決定します。 SS席8,000円. S席7,000円.A席6,000円.B席5,000円、5月25日優先予約.6月6日に発売します。
赤字にならないようにと発売前に団体予約セールスを決行します。おかげさまで、5団体約500席が決まり、優先予約と発売初日でSS席. S席はほぼ完売し、赤字額は遥かに越え胸を撫で下ろします。
9月18日、新宿コマ劇場の渡部部長さんと幸子プロモーションに表敬訪問です。会館の舞台概要やチケットの売れ行きなどを説明します。
11月28日、小出郷文化会館主催の初演歌企画「小林幸子特別公演」は大入り大盛況で幕を下ろします。広域議会で演歌公演について質問した議員さんも訪れ、大変喜んでくれました。
心配していた事業収支は700万円の黒字となり、小出郷文化会館の芸術文化振興基金に積み立てすることができました。
幸子さんは「思いで酒」がヒットするまでは毎年、小出町柳原のバー上村で歌っています。定宿は旧湯之谷の村上屋さんで、幸子さんのお母さんが身の回りの世話をしていました。
下積み時代に訪れた小出町柳原、なんとしても小出郷文化会館の初演歌公演で錦を飾って欲しかったのです。
旧小出町柳原通りにあったバー上村。
浦佐駅に幸子さんを見送り、その時にこの思いを伝えます…そして、バー上村で歌う幸子さんの写真をお渡しすると、にっこりと微笑んでくれました。密かな夢が叶った瞬間でした。
バー上村でバンド演奏付きで熱唱する小林幸子さん。
新宿コマ劇場連携公演によりスタートしたお楽しみ企画は好評を博し、毎年開催するようになったのでした。
つづく
付録
〈お楽しみ企画ヒストリー〉
第1回小林幸子25周年特別公演(2回)
平成10年11月28日(土)
小出郷文化会館大ホール
来場者1,916人
第2回石川さゆり特別公演(2回)
平成11年10月9日(土)
小出郷文化会館大ホール
来場者1,735人
第3回五代夏子特別公演(2回)
平成12年12月2日(土)
小出郷文化会館大ホール
来場者1,297人
第4回天童よしみ特別公演(2回)
平成13年10月12日(2回)
小出郷文化会館大ホール
来場者2,029人
第5回川中美幸特別公演(2回)
平成14年10月24日(木)
小出郷文化会館大ホール
来場者1,475人
第6回小林幸子30周年特別公演(2回)
平成15年10月25日(土)
小出郷文化会館大ホール
来場者1,420人
第7回吉田兄弟コンサート
平成16年3月27日(土)
来場者1,097人
第8回チェンミンコンサート
平成16年6月29日(火)
来場者694人
第9回綾小路きみまろ漫談トークショー
平成16年9月5日(日)
小出郷文化会館大ホール
来場者1,176人
第10回美川憲一特別公演(2回)
平成16年10月16日(土)
小出郷文化会館大ホール
来場者694人
第11回五木ひろし特別公演(2回)
平成17年10月15日(土)
小出郷文化会館大ホール
来場者1,818人
第12回吉田兄弟コンサート
平成18年3月18日(土)
小出郷文化会館大ホール
来場者に1,161人
第13回坂本冬美特別公演(2回)
平成18年11月14日(火)
小出郷文化会館大ホール
来場者1,761人
第14回レビュー・タカラヅカ
平成19年6月10日(土)
小出郷文化会館大ホール
来場者997人
第15回島津亜矢コンサート(2回)
平成19年11月9日(日)
小出郷文化会館大ホール
来場者1,346人
第16回香西かおりコンサート(2回)
平成20年10月4日(土)
小出郷文化会館大ホール
来場者920人
第17回水森かおりコンサート
平成21年4月24日(金)
小出郷文化会館大ホール
来場者1,307人
第18回小椋佳コンサート
平成22年10月2日(土)
小出郷文化会館大ホール
来場者734人
第19回東京スカパラダイスオーケストラ
小出郷文化会館大ホール
来場者891人
第20回AIコンサート
平成24年6月5日(火)
小出郷文化会館大ホール
来場者920人
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