昭和音楽大学提携事業
昭和音楽大学は多様なコース学科と、一流の講師陣による指導を誇り、ステージや学外での実践の場を大切にする大学です。
昭和音楽大学の名称は知っていたのですが、日本で初めて音楽運営学科(アートマネジメント)を創設した大学とは知るよしもありませんでした。
*アートマネジメントとは音楽や演劇、美術などの芸術活動を支援する際の方法論なのです。
芸術活動を支援する際に適切に展示方法や広報などを統一的にマネージメントすることで、より多くの人に対して、より質の高い芸術に触れる機会を提供することを目的としています。
昭和音楽大学に音楽運営学科があることを知ったのは、「住民による文化を育む会」に昭和音楽大学の助教授が講師で訪れたことにより知り得ます。
平成7年11月1日に館長に就任するとまもなく、昭和音楽大学生涯学習センターの所長の町田裕さん(芸術情報プラザアドバイザー)から電話が入りおつき合いが始まります。
ことの始まりは。芸術情報プラザから小出郷文会館の住民参加による建設経緯の調査と文化活動のリーダー等のヒヤリングやアンケートに起因します。
そのアンケート調査には昭和音楽大学音楽芸術運営学科アートマネジメントコースの4年生の学生が会館建設準備室に10日間通いアンケートの準備をしています。
会館オープン前に昭和の学生さんと交流しながら音楽芸術運営学科の情報を得ることもでき、昭和音楽大学に益々興味深々になっていきます。
町田裕さんは、この調査報告書まとめ、平成8年(公社)全国公立文化施設協会の総会にて講演するといった目的があり、その調査の中で、考えもしないお話しがあります。
町田さんは、昭和音楽大学と小出郷文化会館とが提携して、昭和音楽大学生涯学習センターのセミナー事業を開催したいとご提案をいただきます。
願ってもみない提案は、「コーラスセミナー」と「リトミックセミナー」です。昭和音楽大学生涯学習センターのカリキュラムを小出郷文化会館の事業化にすることでした。
コーラスセミナーは昭和音楽大学の国内第一線の樋本英一さんを講師として招聘し、指導者コースと合唱コースを設けて2泊3日で行うというものです。
また、リトミックセミナーは国際ライセンスを持つ指導者、昭和音楽大学助教授の平島美保さんを招聘し2日間コースを開催をすることでした。
平成8年3月10日には、小出郷文化会館の開館直前トークシンポジウムを企画します。このような強者お二人にお願いして、町田裕氏と中野昭氏からご登壇していただきます。
この10日後、3月20日に町田氏は突然心筋梗塞で他界します。これからという時に愕然とする訃報、涙が止まりません…大きな支えをなくし、悲しいく辛い出来事で、途方に暮れます。
葬儀に参列した時に昭和音楽大学の下八川共祐理事長さんが町田裕氏との大学提携企画(コーラスセミナー・リトミックセミナー)について尋ねられ、後日、下八川理事長が直接会館に訪れてくださいました。
これまでの経過をご説明します。「町田が提案した提携の件は私が責任を持って実施しますから心配しないでください。」嬉しいお言葉を頂戴します。
「小出郷文化会館は響の良いホールがあると聞きました。ぜひ見せてくれますか。」「はい、ご覧ください。」と大ホールにご案内します。
「響きが長がすぎず、短かすぎず心地よい残響ですね。」、「ありがとうございます。満席で1.2秒です」、「コーラスセミナーの中で藤原歌劇団の特別公演もやりましょう」…とんとん拍子に企画が決まります。
平成8年8月25日、コーラスセミナーの藤原歌劇団公演には、下八川理事長と奥さまが訪れご満悦です。夕方からは湯之谷村温泉まつりの花火大会にご案内します。
友家ホテルの屋上からの花火鑑賞は最高のシチュエーションで毎年訪れています。下八川理事長さんは、屋上の手摺りから体を乗り出し、歓声を上げるなどして楽しんでいたきました。
後に、私は昭和音楽大学の非常勤講師として2回(H13.11.8.旧厚木キャンパス・H16.12.6.新百合ヶ丘キャンパス)ほど教壇に立たせていただきます。
昭和音楽大学との馴れ初めや小出郷文化会館の企画運営、連携事業などについて語っています。学生さんは、下手な講義を真剣に聴いてくださり、助かりました。
このような体験から昭和音楽大学を詳しく知ることになり、小出郷文化会館の魚沼文化自由大楽構想の最初の一歩がおぼろげながら見えてきます。
平成10年、昭和音楽大学の小林真理(当時は昭和音大音楽運営学部の助手、現在は東京大学院教授)さんに大学アートマネジメント研修合宿を小出郷文化会館で出来ないかと相談します。
前にも触れましたが、この年に新潟県の一村一価値づくりに企画提案しています。それは、あそび.まなび.ふれあう文化のまちづくり「魚沼文化自由大楽の建設」構想です。
文化会館脇に自由大楽を機能させるための校舎及び宿泊棟をつくることで、新潟県全体の芸術文化や生涯学習推進の核施設として、22世紀に伝え心を育む事業として申請しています。
結果は一村一価値づくり奨励賞を受賞。小出郷文化会館を核とした文化のまちづくりを創出する夢を描き、これに小林真理さんは共感してくれました。
早速、昭和音楽大学の下谷川理事長に小林さんと交渉、平成11年から試験的に研修会をスタートします。平成13年からは新潟大学も参加しています。
後に昭和音楽大学・新潟大学研修事業から大学アートマネジメント研修合宿講座に拡大し、跡見女子大学や東京藝術大学、東京大学大学院からの研修生が参加しています。
このように、下八川理事長との出会いから「昭和音楽大学アートマネジメント講座」が始まり、提携事業は更に深まっていきました。
平成11年7月、小出郷文化会館は吹奏楽のセミナーから小出郷管楽アンサンブルのメンバーを指導者としたジュニアブラスオーケストラが発足します。
この取り組みから各種楽器を整備することを計画しますが、高価な楽器を全部を揃えることはできないことから、地域の学校に楽器の借用を依頼しています。
一方で提携事業を推進し、信頼関係のある昭和音楽大学にも打診したところ、大学で使われていない楽器(十三点、約百六十万円相当)の一部を寄贈していただきます。大変ありがたいことでした。
平成13年2月24日、小ホール…5年間の関係の親密さから生まれた「小出郷文化会館=昭和音大フレントシップコンサートを開催します。
小出郷文化会館フランチャイズ団体のKJBO小出郷ジュニア・ブラスやKWE小出郷管楽アンサンブル、KRO小出郷リコーダーオーケストラの共演が決まります。
〔出演〕
KJBO小出郷ジュニアブラスオーケストラ35人
KWE小出郷管楽アンサンブル27人
KRF小出郷リコーダーファミリー20人
大森智子(ソプラノ)松尾俊哉(バリトン)
寿山忠身(トランペット)村上紀義(チューバ)
昭和音楽大学サクソフォーン・カルテット
〔演目〕
バッハ G線上のアリア
モーツァルトの歌劇 ドン・ジョバンニ
シューベルト ます 他
【事業成果】
①同じ曲の交互の演奏や共演といったプログラム上の工夫により、内容の濃い演奏会になった。②合同練習の機会があったことから、交流を深めると共に相互に大きな刺激となった。③音楽大学がない新潟県で音大の講師や音大に学ぶ学生と交流を深められたことは大いに意義があった。
【課題】
①昭和音楽大学フルート側のスケジュールの都合もあり、冬季間の開催にならざるを得ないため、集客が難しかった。②出演者全員の演奏があればさらによかった。③地元出演者にコンサートの趣旨を徹底し、参加意欲が高まる工夫が必要だった。
昭和音楽大学が誇る声楽家陣と管楽器家陣と小出郷文化会館フランチャイズ団体が5年間の交流の末に実現したコンサートで友情の響きを奏でたのでした。
また、昭和音楽大学のフルート音楽合宿(2泊3日)を受け入れも始まります。地元の温泉宿にお願いして、バスをチャーターしたことから経費が安くなり大変喜ばれました。
このマネジメント手法は魚沼ジャズセミナーにも生かされています。
このような経過から小出郷文化会館が積極的に展開しているアウトリーチプログラムにも平成15年度から参加いただきます。
平成15年6月5日、18ホールの個性が越後魚沼の山々をパノラマに展開する、越後ゴルフ場倶楽部の第1ティー・グラウンドにで開催します。
演奏者はフレンドシップ・コンサートに出演いただいた昭和音楽大学サクソフォーン・カルテット(福本信太郎.清水容子.松原孝政.河西麻希)です。
2003.6.5. 越後ゴルフ倶楽部 入場者51人
2003.6.6. 広神中学校全校 270人
小出病院体育館 150人
小出高校吹奏楽部クリニック 25人
平成16年は総務省過疎地域等活性化推進モデル事業の指定を受けて『魚沼文化未来都市プロジェクト「サロンコンサートシリーズ」』に出演します。
衝撃のサクソフォーンと題して、守門村の議場や圏域の小学校で昭和音大サクソホォーンが演奏しています。
守門村議会議場(入場者103人)伊米ヶ崎小学校全校(108人)小出小学校4年生(143人)
フレンドシップ・コンサートを皮切りにアウトリーチプログラムなど昭和音楽大学の様々な企画へと広がりが生まれ連携から交流へと広がっていきました。
下八川理事長の息子さん下八川公祐さんから電話があります。「新百合ヶ丘駅近くに緑川酒造(株)の緑を売りにしてる居酒屋があります、一献しませんか」、快く伺います。
公祐さんから「新百合ヶ丘のキャンパスを改築する計画があり相談にのって欲しいのですが…」、「私にできることがあれば協力させていただきます。」
公祐さんと意気投合します。昭和音楽大学新百合ヶ丘キャンパスは平成18年に改築オープン…昭和音楽大学の親子と親密な結びつきとなります。
現在は昭和音楽大学の理事で事務局の企画広報部長となって活躍しています。町田裕さんとの出会いから昭和音楽大学との交流は更に発展してゆくのでした。
つづく
〜提携から交流へ〜地域の皆様との交わりとともに
学校法人東成学園 昭和音楽大学
理事長 下八川共祐
小出郷文化会館開館5周年おめでとうございます。開館5周年という言葉をうかがうと、現在の櫻井館長が開館準備に東奔西走していらした頃に思いを馳せざるえません。
奇しくも当時私どもの大学でもアートマネジメントの専門家を育成する音楽芸術運営学科を配置し、節目の時期を迎えおりました。
館長と劇団四季等の舞台芸術に関わってきた故・町田裕参与(当時)とのなんとも不思議な出会いから、開館前から提携プログラムの構想を練り始めることになりました。
ところが開館目前にして、実現を願いつつ町田裕氏は急逝されてしまいました。しかし町田氏の遺志を受け継ぎます。
住民参加と教育の場としての会館という方針に沿って、コーラスとリトミックのセミナーという提携プログラムに結実しました。
これを端に早5年、いまや音楽芸術運営学科の実習先やフルートアンサンブルの合宿先として受け入れいただいています。
今年は小出郷の各レジデンス団体の皆様と私どもの学生・卒業生によるフレンドシップ・コンサートの開催に至りました。
このように提携から交流へとも言えるまでに発展し、ほぼ毎月のように本学の卒業生・学生や教員が小出郷の地で地域の皆様とのふれあいを通じて芸術が生まれています。
これも館長をはじめスタッフの皆様、各自治体の関係者様、そしてイベントに足を運んでいただける地域住民の皆様のご支援なくしては、とてもなしえなかったことです。
この場合をお借りして心から御礼を申し上げるとともに、町田裕氏の思いを胸にさらに深い提携を心から願っております。
小出郷文化会館5周年記念誌にありがたいメッセージを寄稿いただいておりました。
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