アウトリーチで中越大震災復興祈願プログラム

中越大震災は1ヶ月余りで震度5以上の余震が17回も続き、脱線した上越新幹線の復旧作業が難航してなかなか上京出来ない状況です。
日頃お世話になってきた文化庁や(財)地域創造、(公社)全国公立文化施設協会などに地震現況報告に伺えませんでした。

当時私は(財)地域創造(総務省の外郭団体)の研究委員をしていて、公立文化施設における政策評価等のあり方に関する調査研究(指定管理者制度を中心に)の会議のため月に一度は地域創造へ出向いていました。
平成16年12月1日、大きな余震が落ち着いた頃を見計らって、ようやく湯沢駅(浦佐駅は閉鎖)から新幹線で(財)地域創造の遠藤安彦理事長に震災状況報告に伺います。

遠藤理事長は開口一番に「復興支援に特別予算をいくらでも用意するから、被災者にアウトリーチを活用したコンサートを考えて欲しい」ありがたいお言葉でした。

「ありがとうございます。できれば被災地の復旧の目処が立ち、被災者が孤独になりがちな1年半後の平成18年にお願いできますか…
阪神淡路大震災では1年半を経過した頃からボランティアはいなくなり、報道関係者も去り、孤独死が急増しています…

…ですからじっくりと企画を練って、被災者への芸術文化からの心の復興になるよう、阪神淡路地震での教訓を活かしましょう!」
遠藤理事長は「そうですね、わかりました。そのように準備をしましょう」と優しい眼差しで微笑んで承諾してくれました。

遠藤さんは自治省の事務次官を経て、1998年2月から財団法人地域創造理事長に就任、FIFAワールドカップ日本組織委員会副会長兼事務総長、(財)日本宝くじ協会理事長を歴任していました。
また、(財)地域創造では、平成15年度の(財)地域創造ステージラボ沖縄・佐敷セッションのホール入門コースのコーディネーター役でお世話なり、アウトリーチも研修に取り入れています。

それから私が魚沼市合併当時に魚沼市にアーツカウンシルを導入したいと提案したことについて、遠藤理事長や小林真理さん(東京大学院教授)から適切なアドバイスを頂戴してます。

平成17年1月18日、(財)地域創造の第一回JAFRAアワード総務大臣表彰を受賞します。麻生太郎大臣から直接受理するなど(財)地域創造とは切っても切れないご縁を沢山授かりました。
このように繋がりが太くなり、文化芸術を活かした中越大震災からの復興を促す大規模な企画運営に関わる機会をいただきます。

平成18年、(財)地域創造から特別に文化芸術からの復興事業として助成を受けた「中越大震災復興祈念プログラム」に取り組み、(社)日本クラシック音楽事業協会からも共催していただきます。

中越大震の被災者の励みになるように企画した復興祈念コンサートは、遠藤理事長肝入りで(財)地域創造から音楽活性化事業復興支援特別補助金(3,000万円)を活用します。
演奏家については、財団法人地域創造の公立ホール音楽活性化の登録アーティスト6組に依頼し、学校や施設などでアウトリーチを展開します。

5月13日、中越大震災復興祈念プログラムの記者会見を5市町村(長岡市・見附市・小千谷市・十日町市・魚沼市)を代表して魚沼市役所で開催します。

星野市長、遠藤理事長(財地域創造)、善積常務理事(日本クラシック音楽事業協会)、音楽監督の白石光隆さんから参列いただきます。

私からは、プログラムの経緯と企画内容を説明…アウトリーチは学校訪問コンサート(12公演)とサロンコンサート(24公演)で中越地区の5市町村を訪れます。
〜中越大震災復興祈念コンサート・プログラム〜
第1回.〜東の月、西の月
大森智子(ソプラノ)中川賢一(ピアノ)
5.1.小千谷市極楽寺本堂.入場者53人
5.2.小千谷市東山小5〜6年生20人
5.2.小千谷山谷小3〜6年生20人
5.8.魚沼市興珊寺本堂.入場者84人
5.9.魚沼市小出小5年生109人
5.9.魚沼市須原小5〜6年生61人
1部.アヴェ・マリア.オペラ「ラ・ボエーム」よりムゼッタのワルツ.星の夜.月の光(ピアノ・ソロ).オペラ「魔笛」より夜の女王のアリア.ジュ・トゥ・ヴ
2部.荒城の月.ことりのうた.さっちゃん.青い目の人形.ゴンドラの唄.今夜だけの○○○ファンタジー.花

ー華麗な響き 復興を後押しー
  新潟日報2006.5.3
中越地震被災者の心を音楽で癒そうと一日夜、小千谷城内の極楽寺で「中越大震災復興祈念コンサート」が開かれた。(中略)

寺の本堂にソプラノ歌手の大森智子さんのゆったりとした歌声と中川賢一さんの流麗なピアノが響き渡り、集まった約六十人は夢の世界に浸っていた。(中略)

同市の稲荷町のアパート、高橋幸子さんは「こんな近くでプロの演奏が聴けるなんて幸せです。地震で疲れた心にゆとりが生まれますね」と喜んでいた

中越大震災復興祈念プログラム BSNニュース
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第2回.〜ピアノまるかじり〜
白石光隆(ピアノ)
5.19.魚沼市堀之内小5年生60人
5.19.魚沼市伊米ヶ崎小4〜6年生41人
5.20.長岡市越路商工会館.入場者80人
7. 5.堀之内商工会館.入場者61人
7. 6.長岡市越路小6年生100人
7. 6.長岡市越路南小5〜6年生86人
1部.調子の良い鍛冶屋.映像第1集より水の反映・運動.ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調op.27-2「月光」
2部.プレイアデス舞曲集第2集より1.消極的な前奏曲3.線形のロマンス7.積極的なロンド.優しき伴侶.劇場街のざわめき.ノクターン.英雄ポロネーズ

第3回.〜響きの玉手箱〜
山崎祐介(ハープ)
5.24.長岡市栃尾産業交流センター.入場者61人
5.25.長岡市栃尾南小5年生60人
5.25.長岡市東谷小5〜6年生55人
5.26.魚沼市入広瀬小4〜6年生42人
5.26.魚沼市入広瀬中全校42人
5.27.魚沼市道の駅いりひろせ.入場者50人
1部.小川.月の光.亜麻色の髪の乙女.ハープ協奏曲
2部.ハイドンのテーマによる変奏曲.森の中の泉へ.朝に.アルバース:マンドリン

第4回.〜おと の ゆりかご〜
宮本妥子(マリンバ・パーカッション) 
中路友恵(パーカッション)
6.13.見附市上北谷小3〜6年生60人
6.13.見附市田井小3〜6年生50人
6.14.見附市アルカディアロビー入場者109人
6.15.魚沼市湯之谷庁舎第一会議室.入場者62人
5.16.魚沼市東湯之谷小5〜6年生32人
5.16.魚沼市井口小4〜5年生95人
剣の舞他

第5回.〜しゃべくっちょな金管楽器〜
バスファイブ(金管五重奏団)
6.21.川口町川口小5〜6年生56人
6.21.川口町泉水&田麦山小3〜6年生39人
6.22.川口町生涯学習センター入場者76人
6.23.魚沼市広神東小5〜6年生92人
6.23魚沼市広神西小4〜6年生83人
6.24魚沼市旧守門議会議場入場者42人
第1部.歌劇「ラムダ」より貴族たちの行列.コルチェスター・ファンタジーより
第2部.スター・ダスト.キャッツ組曲より
第6回.〜四弦の希いは一つ、心潤う裕かな時を〜

弦楽四重奏  
7.20.魚沼市上条小4〜6年生28人
7.20.魚沼市宇賀地小4〜6年生60人
7.24.魚沼市子育て支援Sぱぴぷ入場者51人
9.15長岡市中島小5年生57人
9.15長岡市桂小4〜6年生22人
9.26長岡市リリックホール・ロビー入場者84人
第1部.アイネ・クライネ・ナハトムジークより第1楽章.弦楽四重奏曲第2番第3楽章「夜想曲」.弦楽四重奏曲より第2楽章
第2部.弦楽四重奏曲第14番 ト長調 k.378

この集大成として小出郷文化会館で開催した「ガラ・コンサート」です。小出郷流のアウトリーチから聴衆をツモる方程式です。

11月19日は6組の演奏家が一堂に会し、被災者を招待して、中越大震災復興祈念ガラコンサート並びに小学校5年生招待コンサートを開催します。

フィナーレでは「フェスタ・デイ・ウオヌマ」と題して、観客が全員参加しての大即興演奏に会場は盛り上がり、被災者の心に寄り添ったコンサートになりました。(一般と小学5年生招待の2公演)
プログラム
アメイジング・グレイス.ウィリアム・テル序曲.剣の舞.夜の女王のアリア.グラン・タンゴ.スペイン・弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー」第1番より第1楽章.ジャスト・ア・クローザー・ウォーク・ウィズ.ジィー.私はここに

フィナーレ 魚沼の祭り「ウ・オ・ヌ・マ!」

いずれも心のこもった素晴らしい演奏で、各被災地域の方々に好評をいたくと共に、アーティストにとっても収穫の多いコンサートとなりました。
ー復興の調べ 高らかー 
 新潟日報2006.11.20
中越地震被災地をめぐりクラシックのコンサートを開いてきた『中越大震災復興祈念コンサートプログラム』のフィナーレとなるガラ・コンサートが十九日、魚沼市小出郷文化会館で開かれた。(中略)

しっとりとした祈りの音楽から心沸き立つ曲まで幅広い楽曲が観客を喜ばせた。(中略)

最後には、観客がおもちゃの鳴り物を手に参加して、即興で「魚沼の祭り」を表現。紙吹雪や風船が舞う中、「ウ・オ・ヌ・マ!」と大合唱し、復興を誓った。
文化芸術が震災復興に寄与できると認識され、貴重な試みとなったこのプログラムは、今後に活かすべき事例となります。

平成17年に発生した福岡県西方沖地震の復興や新潟県復興基金を活用した震災フェニックス〜震災から立ち上がる文化の祭典に役だっていきます。
アウトリーチは教育や福祉、観光、災害復興など多様な分野に広がり、後のうおぬま芸術文化創造プロジェクトへと発展してゆきます。
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一方、加来陽子さんの「心のふるさとふれあいコンサート」〜地震・大雪にも負けずにがんばろう〜も継続的に実施しています。
①2006.1.29 結の灯りスタートイベント50人
②2006.3. 5 折立温泉百八灯500人
③2006.10.20伊米ヶ崎小学校65人
④2006.12.15新道島集落センター50人
ー被災地に勇気ふたたびー 
 新潟日報2006.12.17
中越大震災直後に魚沼市で被災者を勇気づけるため歌手の加来陽子さんとギターリストの西野雅人さんのコンサートが一五日夜、再び被災者を訪ね、新道島の集落センターでコンサートを開いた。集まった五十人ほどの住民は童謡などを楽しみながら久々の再会に胸を熱くした。

⑤2006.12.16胎内市産業文化会館279人
⑥2006.12.17県立小出病院180人
ー澄んだ歌声とギターを楽しむー
 小出郷新聞2007.12.17
歌手の加来陽子さんとギターリストの西野雅人さんによる「クリスマスコンサート」が12月17日、県立小出病院体育館で開かれ、入院患者や地域の人々たちが澄んだ歌声とギターの音色を楽しんだ。

被災者に寄り添った心のふれあいコンサートも続く…

つづく

付録

コーポA&O (桜井俊幸.A&O企画)

【桜井俊幸】 魚沼市生まれ。魚沼市小出郷文化会館を18年は5ヵ月務め名誉館長。後に(公社)全国公立文化施設協会(参与)と文化芸術による復興推進コンソーシアム(東京事務所長)。全国国民文化祭総合コーデネイターなどを歴任。 【コーポA&O】 魚沼市内に5棟や駐車場を経営している。 【あんさ&おっさ】 昭和56年、桜井俊幸、治兄弟で結成したオリジナルフォークデュオです。今年8月44年目を迎える。

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